細胞増殖の測定方法:測定法とアッセイの比較

Promega Corporation

Publication date: 2026

概要


細胞の成長と分裂の過程である細胞増殖は、細胞を用いた研究における基本的な評価項目です。増殖の変化は、処理が細胞の挙動に影響を及ぼしていることを示す初期指標のひとつです。そのため、創薬、がん生物学、免疫学、細胞治療の各分野で、化合物のスクリーニング、標的の検証、治療効果の評価に細胞増殖アッセイが広く利用されています。細胞増殖の代表的な測定法には、代謝活性アッセイ、DNA合成測定、増殖マーカーの免疫検出、色素希釈法、DNA量の定量という5つがあります。それぞれ、処理能力、特異性、ワークフローの複雑さ、増殖を直接測定するか代替指標から推定するかという点で、異なる長所と制約があります。

近年、第6の方法として、核内増殖マーカーKi-67を検出する洗浄不要の発光イムノアッセイが登場しました。この方法では、迅速で簡便な「添加-混和-測定」プロトコルにより、細胞増殖に特異的で信頼性の高い測定結果が得られます。本ガイドでは、各測定法の長所と制約を比較し、実験目的に最適なアッセイを選択するための考え方をご紹介します。

細胞増殖を測定する重要性

基本的な用途として、細胞増殖のモニタリングは日常的な細胞培養管理の一部です。想定される倍加時間の確認、継代間における増殖の一貫性の追跡、遺伝的ドリフト、表現型の変化、コンタミネーションなどの潜在的な問題の検出に利用されます。細胞増殖は、細胞が周囲の環境にどのように応答しているかを示すため、日常的な培養管理だけでなく、細胞を用いた研究で最も一般的な測定項目のひとつでもあります。薬剤処理、遺伝子の改変、増殖因子による刺激、培養条件の変更などに対する細胞の応答を評価できます。

創薬および毒性研究

細胞増殖アッセイは、創薬初期のスクリーニングに欠かせない手法です。化合物が細胞増殖を抑制するかを確認し、次の開発段階へ進めるヒット化合物の優先順位付けに役立ちます。抗増殖標的に対するスクリーニングでは、化合物を迅速に選別するため、信頼性の高い細胞増殖測定が必要です。また、安全性および毒性プロファイリングにおいても重要な役割を果たします。医薬品候補が、標的としていない細胞集団の増殖に意図しない影響を与えていないかを確認できます。

分子標的治療薬およびバイオ医薬品

PROTACや分子糊を用いて疾患関連タンパク質を選択的に分解する標的タンパク質分解は、創薬分野で急速に成長している領域のひとつです。細胞増殖アッセイにより、標的タンパク質の分解が「細胞増殖の停止」という機能的な細胞応答につながることを確認できます。同様に、細胞毒性を持つ薬剤を特定の細胞種へ送達する抗体薬物複合体(ADC)では、薬剤が標的細胞へ到達し、その分裂を停止させていることを細胞増殖測定によって検証します。いずれの場合も、細胞増殖は治療薬が意図した作用機序で機能していることを確認する下流の指標となります。

免疫学および細胞治療

リンパ球の増殖、特にT細胞の活性化とクローン増殖は、免疫機能を評価する重要な指標です。免疫腫瘍学では、腫瘍細胞の増殖を停止させる一方で、免疫細胞の増殖を促進する必要があります。細胞増殖アッセイは、T細胞の活性化の定量、製造工程におけるCAR-T細胞の増殖評価、免疫細胞の増殖を促進または抑制する免疫調節物質のスクリーニングに利用されます。

がん生物学および作用機序研究

制御不能な細胞増殖は、がんを特徴づける性質のひとつです。腫瘍細胞の分裂速度、治療への応答、RAS経路などのがん原性変異が増殖を促進するかどうかは、がん研究における重要な研究課題です。がん研究以外でも、細胞周期の制御、増殖因子シグナル、チェックポイント制御など、細胞分裂を制御する分子経路の解析に細胞増殖アッセイが利用されています。

細胞増殖と細胞生存率の違い

細胞増殖とは、細胞周期を進行して娘細胞を生み出す、活発に分裂している状態を指します。一方、細胞生存率は、細胞が生存し、代謝活性を維持していることを示します。一般に「細胞増殖アッセイ」と呼ばれる方法の多くは、実際には細胞生存率、すなわち生細胞数を測定し、その経時的な変化から細胞増殖を推定しています。この方法は、細胞生存率のシグナルが細胞数に比例するという前提に基づいており、多くの日常的な実験では有効です。ただし、実験条件によっては、この前提が成り立たないことがあります。例えば、細胞を死滅させずに細胞周期を停止させる処理では、増殖が停止していても細胞生存率のシグナルはほとんど変化しません。細胞が生存しているかではなく、実際に分裂しているかを確認したい場合は、細胞分裂に関連する指標を直接測定するアッセイの方が、より明確な結果を得られます。

意味のあるデータを得るには、検証したい生物学的な問いに合ったアッセイを選択することが重要です。ただし、測定目的だけでなく、必要な処理能力や利用可能な装置も、実際に使用できる方法を左右します。以下では、従来から使用されている5種類の細胞増殖アッセイと、新しい洗浄不要の発光イムノアッセイを比較します。

代謝活性アッセイによる細胞増殖測定

代謝活性アッセイは、プレートベースで細胞増殖を推定する方法として最も広く利用されています。ウェル内に存在する、代謝活性を持つ生細胞数の代替指標として、生細胞の酵素活性を測定します。一般的には、ミトコンドリア脱水素酵素または関連酵素による基質の還元を利用します。培養細胞に試薬を添加すると、生細胞が酵素反応によって試薬を検出可能な生成物へ変換します。代謝活性を利用する主な細胞増殖アッセイは次のとおりです。

Tetrazolium reduction assays (MTT, MTS, XTT, WST-1):

生細胞は、NAD(P)H依存性脱水素酵素によってテトラゾリウム塩を還元し、有色のホルマザンを生成します。MTTでは不溶性の紫色ホルマザンが生成されるため、可溶化工程が必要です。MTSおよびWST-1では可溶性生成物が得られ、そのまま測定できます。CellTiter 96® AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)は、「添加-インキュベーション-測定」の簡便なワンステップ比色プロトコルです。CellTiter 96® Non-Radioactive Cell Proliferation Assayは、MTTを使用した測定法です。

レサズリン還元アッセイ

青色で非蛍光性のレサズリンは、生細胞によって還元され、ピンク色の蛍光性レゾルフィンに変換されます。CellTiter-Blue® Cell Viability Assayはこの反応を利用しており、蛍光または吸光度で測定できます。

ATPベースの生物発光アッセイ

ホタルルシフェラーゼ反応を利用し、ATP量に比例する発光シグナルから生細胞数を測定します。CellTiter-Glo® Luminescent Cell Viability Assayは、この方式で最も広く引用されているアッセイです。非常に高い感度、広いダイナミックレンジ、シンプルな「添加-混和-測定」プロトコルを備えています。

リアルタイム代謝アッセイ

RealTime-Glo™ MT Cell Viability Assayは、非溶解式の連続測定型発光反応を利用しています。測定時点ごとにサンプルを失うことなく、同じウェルで数時間から数日間にわたって細胞生存率を経時的にモニタリングできます。

長所

  • シンプルな均一系プロトコル(多くは添加して測定するだけ)
  • 96、384、1536ウェルフォーマットに対応する高い処理能力
  • 高感度、特にATP発光アッセイでの優れた感度
  • プレートリーダー以外の専用装置が不要
  • 優れた費用対効果
  • 一部のフォーマットで可能な非破壊的キネティック測定

制約

  • 細胞分裂そのものではなく、代謝活性を測定する間接的な方法
  • 細胞当たりの代謝活性の変化による影響(ミトコンドリア機能やATP代謝に作用する化合物など)
  • 細胞増殖抑制作用と細胞毒性作用の識別が困難
  • 連続モニタリング方式を除き、ほとんどが溶解式のエンドポイント測定

CDK阻害剤に関する注意点:CDK4/6阻害剤で処理した細胞は分裂を停止しますが、多くの場合、細胞サイズは増大し続け、代謝活性も維持または上昇します。このような場合、代謝活性アッセイではシグナルが低下せず、むしろ増加することもあり、細胞増殖抑制作用を見逃す可能性があります(この点についてブログで詳しく見る)。Ki-67マーカーアッセイ、DNA合成測定、DNA量測定など、増殖状態により直接関連する測定法を用いることで、代謝活性アッセイでは捉えられない細胞増殖抑制作用を検出できます。CDK阻害剤は広く使用されている治療薬のクラスであるため、がん創薬スクリーニングでは特に重要なポイントです。

適した用途

一般的な細胞生存率スクリーニング、ハイスループット創薬、日常的な細胞培養モニタリング、細胞生存率と細胞増殖が密接に連動する用途、コストを重視する大規模実験

DNA合成を利用した細胞増殖測定

DNA合成アッセイでは、S期における新たなDNAの合成を直接測定するため、ゲノムを複製している細胞を特異的に検出できます。標識したヌクレオシドアナログを新しく合成されるDNAへ取り込ませ、その標識を検出します。

DNA合成アッセイには、次の3種類があります。 

[³H]-チミジン取り込み法:古典的なゴールドスタンダードです。DNA複製時に放射性チミジンを細胞へ取り込ませ、回収したDNAの放射活性をシンチレーションカウンターで測定します。非常に高感度ですが、放射性物質の取り扱いと廃棄が必要なため、現在では非放射性の方法への移行が進んでいます。

BrdU(5-bromo-2′-deoxyuridine):複製中のDNAへ取り込まれるチミジンアナログです。一定時間標識した後、細胞を固定し、取り込まれたBrdUを抗BrdU抗体で検出します。BrdUエピトープを露出させるためのDNA変性と、それに続く抗体染色が必要な多段階プロトコルです。

EdU(5-ethynyl-2′-deoxyuridine):抗体ではなく、銅触媒クリックケミストリーで検出する新しいチミジンアナログです。DNA変性が不要であり、より短時間かつ低バックグラウンドで染色できます。

長所

  • DNA複製の直接測定による分裂細胞の特異的な検出
  • 顕微鏡またはフローサイトメトリーによる1細胞レベルの解析
  • 細胞周期解析用DNA染色との組み合わせ
  • BrdUより迅速に検出できるEdUクリックケミストリー
  • 十分に確立され、多くの論文で使用されている測定法

制約

  • 固定、透過処理、染色、洗浄を伴う多段階プロトコル
  • 多くの作業を必要とし、ハイスループットスクリーニングには不向き
  • 細胞を固定するため再利用できないエンドポイント測定
  • BrdU抗体を結合させるために必要な強いDNA変性処理
  • 特別な取り扱いを必要とする放射性法([³H]-チミジン)
  • S期を捉えるために必要なパルス標識時間の最適化

適した用途

細胞周期停止(S期への移行)の確認、リンパ球増殖を測定する免疫学実験、分裂した細胞を1細胞レベルで特定する研究、フローサイトメトリーによる増殖データと細胞周期解析の組み合わせ、組織内の空間的な細胞増殖を評価する顕微鏡研究

免疫検出による細胞増殖評価

新しく合成されたDNAを標識する代わりに、増殖中の細胞で特異的に発現する内在性タンパク質を検出します。最も広く使用されているマーカーはKi-67です。Ki-67は、細胞周期のすべての活動期(G1、S、G2、M期)に存在し、静止期(G0期)には存在しない核内タンパク質です。そのほか、PCNA(増殖細胞核抗原)や、分裂期の細胞を示すリン酸化ヒストンH3(Ser10)などが使用されます。

細胞または組織切片を固定および透過処理し、増殖マーカーに対する一次抗体とインキュベーションします。標識二次抗体を用いて、顕微鏡、フローサイトメトリー、酵素免疫測定法のいずれかで検出します。

長所

  • 増殖中の細胞に対する特異性(Ki-67はG0期には存在しない)
  • 外部からの標識を必要としない、内在性タンパク質発現の検出
  • 組織切片における空間情報の取得(IHC)
  • 細胞種や活性化状態など、他のマーカーとのマルチプレックス
  • 培養細胞と組織サンプルの両方への適用

制約

  • 固定、透過処理、ブロッキング、抗体反応、洗浄を伴う多段階操作
  • 細胞固定を必要とするエンドポイント測定
  • 低い処理能力(顕微鏡)または中程度の処理能力(フローサイトメトリー)
  • 抗体の品質と染色の一貫性による結果への影響
  • 自動画像解析またはフローサイトメトリーを使用しない場合の半定量的な測定

適した用途

混合集団中で増殖している細胞の特定、フローサイトメトリーによる増殖マーカーと表現型マーカーの同時解析、作用機序研究における細胞周期への移行または離脱の検証、空間情報が重要となる組織切片解析

色素希釈法と世代解析による細胞増殖測定

色素希釈法は、個々の細胞が何回分裂したかを確認する場合に適した方法です。細胞分裂のたびに娘細胞へ均等に分配される蛍光色素で細胞を標識し、フローサイトメトリーによって細胞集団内の各世代を識別します。

測定原理

CFSE(carboxyfluorescein succinimidyl ester)やCellTrace™ Violetなど、細胞内タンパク質と共有結合する安定した蛍光色素を細胞へ取り込ませます。細胞が分裂すると、それぞれの娘細胞は色素のおよそ半分を受け継ぐため、世代ごとに蛍光強度が約半分になります。実験条件下で培養した後、フローサイトメトリーで細胞を解析します。得られるヒストグラムには複数のピークが現れ、それぞれが1回ずつ進んだ細胞分裂の世代を示します。

長所

  • 各世代の識別(通常6~8回の分裂)
  • 1細胞レベルでの分裂履歴の解析
  • 分裂した細胞と分裂回数の違いから明らかになる不均一性
  • 表面マーカーとの組み合わせによる、増殖中の細胞サブセットの特定
  • T細胞の活性化およびクローン増殖研究における標準的な手法

制約

  • フローサイトメーターと解析技術の必要性
  • プレートリーダーでは測定できず、プレートベースアッセイより低い処理能力
  • 色素濃度の最適化の必要性(高すぎると毒性、低すぎると分解能が低下)
  • 分裂回数が増えた場合の蛍光強度低下による検出限界
  • 実験前に細胞を標識する必要がある前向き追跡のみの測定

適した用途

T細胞の活性化およびリンパ球増殖の研究、不均一な免疫細胞集団におけるクローン増殖の追跡、細胞治療製品の製造時の品質管理(増殖能の評価)、細胞当たりの分裂回数を評価する実験、フローサイトメトリーによる分裂追跡と免疫表現型解析の組み合わせ


これまでに説明した測定法には、それぞれ長所と制約があります。代謝活性アッセイは簡便でスケールアップしやすい一方、細胞生存率から細胞増殖を推定します。DNA合成アッセイは分裂中の細胞に特異的ですが、多段階のプロトコルが必要であり、処理能力に制限があります。Ki-67などの増殖マーカーを免疫検出すると細胞増殖を直接評価できますが、固定、染色、専用装置が必要です。色素希釈法では個々の分裂世代を識別できますが、フローサイトメーターが必要であり、プレートフォーマットでは実施できません。

細胞増殖に特異的な測定結果と、プレートベースの迅速性および高い処理能力の両方を必要とする場合には、新しい測定法を利用できます。この方法では、従来の免疫検出でも使用される増殖マーカーhKi-67を、2時間以内で完了する均一系・洗浄不要のフォーマットで検出します。

洗浄不要のKi-67検出アッセイによる細胞増殖評価

従来の細胞増殖測定法には、特異性、ワークフローの複雑さ、処理能力の間にトレードオフがあります。Lumit® Cell Proliferation Assay(Human Ki-67)は、迅速な洗浄不要のプレートベースフォーマットで、細胞増殖に特異的な信頼性の高い測定結果が得られるように設計されています。

測定原理

このアッセイでは、ヒトKi-67に対する2種類の抗体を使用します。それぞれの抗体には、分割したルシフェラーゼの相補的なフラグメントが結合しています(NanoBiT®テクノロジー)。両方の抗体が細胞溶解液中のhKi-67タンパク質に結合すると、ルシフェラーゼフラグメントが再構成され、hKi-67量に比例した発光シグナルが生じます。両方の抗体フラグメントが標的によって近接した場合にのみシグナルが生じるため、結合抗体と未結合抗体を分離する洗浄工程は必要ありません。ワークフローは「添加-混和-測定」です。細胞を溶解し、抗体–基質試薬を添加して、標準的なプレートリーダーで発光を測定します。

Line graph showing highly linear luminescence response (r²=0.998) across Jurkat cell titration in a 96-well plate format using the Lumit® Cell Proliferation Assay (Human Ki-67).
Bar graph showing strong luminescence signal in wild-type HeLa cells and near-zero signal in Ki-67 knockout and no-cell controls, demonstrating specific hKi-67 detection using the Lumit® Cell Proliferation Assay (Human Ki-67).
Line graph showing highly linear luminescence response (r²=0.992) across Jurkat cell titration in a 384-well plate format using the Lumit® Cell Proliferation Assay (Human Ki-67).

図1.広い直線範囲とhKi-67の特異的検出。Lumit® Cell Proliferation Assayは、マイクロプレートフォーマットで優れた直線性を示し、hKi-67量を特異的に検出する。

Dose-response curves for palbociclib and BAY-1895344 in Jurkat cells, showing neither compound induces cytotoxicity at tested concentrations using the Lumit® Cell Proliferation Assay (Human Ki-67).
Dose-response curves showing palbociclib (EC₅₀=42nM) and BAY-1895344 (EC₅₀=85nM) reduce Ki-67 expression in a dose-dependent manner using the Lumit® Cell Proliferation Assay (Human Ki-67).
Dose-response curves showing palbociclib (EC₅₀>10µM) and BAY-1895344 (EC₅₀=155nM) effects on Jurkat cell metabolic activity using the Lumit® Cell Proliferation Assay (Human Ki-67).

図2.細胞増殖低下の測定。 Jurkat細胞(10,000細胞/ウェル、384ウェルプレート、標準的な96ウェル測定量の1/4)を、濃度を段階的に変化させた化合物で処理した。両化合物はhKi-67発現量を濃度依存的に低下させたが、BAY-1895344は細胞毒性も誘導した。Palbociclibは、わずか24時間の処理で細胞毒性を示すことなくhKi-67量を大きく変化させ、化合物が細胞増殖に及ぼす影響を早期に評価できた。総ATP量に基づく評価では、Palbociclibの作用はわずかにしか見えません。

長所

  • 細胞増殖への特異性:細胞周期が進行中の細胞にのみ存在するhKi-67
  • 洗浄不要の均一系「添加-混和-測定」フォーマット
  • 2時間未満で得られる結果と短い実作業時間
  • 代謝状態に依存せず、代謝変化の影響を受けない測定
  • 処理後早期における明瞭なシグナル変化
  • フローサイトメーターや顕微鏡を必要としない、標準的な発光プレートリーダーによる測定
  • スクリーニングに適した96および384ウェルフォーマット
  • 細胞増殖抑制作用と細胞毒性作用を区別するための、細胞膜完全性検出色素とのマルチプレックス測定

制約

  • ウェル当たりの平均Ki-67量を測定するバルク測定であり、1細胞レベルのデータは取得不可
  • 細胞溶解を必要とするエンドポイント測定
  • 分裂回数ではなく、増殖状態のみの測定

適した用途

抗増殖活性を持つ化合物のスクリーニング、刺激物質に対する増殖応答の評価、作用機序研究における細胞周期停止の確認、プレートベースでのT細胞増殖の定量、細胞数に差が生じる前の早期増殖変化の検出、作業量の多いプロトコルの代替、細胞増殖抑制作用と細胞毒性作用を区別するための細胞生存率アッセイとの併用

細胞増殖アッセイの比較

以下の表では、5つの代表的な細胞増殖アッセイと、発光式hKi-67イムノアッセイを比較しています。実験要件に最適な測定法をすばやく選択できます。

測定法 測定対象 洗浄工程 測定時間 処理能力 使用装置
代謝活性(MTT、MTS、ATP、レサズリン) 生細胞の酵素活性/ATP、還元能 なし 10 min – 4 h 高 プレートリーダー
DNA合成(BrdU、EdU、[³H]-チミジン) S期細胞で新しく合成されたDNA 複数回 4 – 8 h 低~中 プレートリーダー、顕微鏡またはフローサイトメーター
免疫検出(Ki-67 IHC/ICC、PCNA、pH3) 細胞増殖関連タンパク質 複数回 6 – 24 h 低 プレートリーダー、顕微鏡またはフローサイトメーター
色素希釈(CFSE、CellTrace™) 細胞当たりの分裂回数(色素強度の半減) 初期標識後に洗浄 数日+解析 1 h 低~中 フローサイトメーター
DNA量(CyQUANT、PI染色) ウェル当たりの総DNA量(細胞数の代替指標) 方法による 1 – 3 h 中~高 プレートリーダーまたはフローサイトメーター
Lumit® Cell Proliferation Assay (Human Ki-67) 細胞溶解液中のhKi-67タンパク質 なし < 2 h 高 プレートリーダー

表1.細胞増殖測定法の比較。「直接測定」は、細胞生存率から推定するのではなく、細胞分裂に特異的な指標を測定することを示す。Lumit® Ki-67は、直接測定、洗浄不要、迅速なプロトコル、プレートベースの高い処理能力を兼ね備えた独自の測定法である。

実験に適した細胞増殖アッセイの選び方

すべての用途に適した単一のアッセイはありません。最適な方法は、明らかにしたいこと、実験規模、利用可能な装置によって異なります。6種類の測定法の中から、具体的な実験目的に合った方法を選択する必要があります。

生物学的な問いから選ぶ

細胞の健康状態への影響を最初に評価するため、一般的な細胞生存率や細胞毒性を測定したい場合は、通常、代謝活性またはATPベースのアッセイが最も簡便でスケールアップしやすい選択肢です。細胞増殖に特異的な結果を得たい場合や、細胞周期停止を確認したい場合は、Ki-67イムノアッセイやBrdU/EdUなど、細胞増殖を直接測定するマーカーがより特異的な情報を提供します。個々の細胞の分裂を追跡したい場合は、フローサイトメトリーを用いた色素希釈法が最も多くの情報を得られます。

処理能力とワークフローから選ぶ

ハイスループットスクリーニングには、均一系で高感度なプレートベースアッセイが必要です。代謝活性アッセイと発光Ki-67アッセイは、いずれもこの要件を満たします。DNA合成アッセイや免疫検出は、条件数を絞った詳細な実験に適しています。フローサイトメトリーベースの方法は、中程度の処理能力と豊富な1細胞データの両方を得られます。

利用可能な装置から選ぶ

フローサイトメーターがなく、プレートリーダーを利用できるラボでは、代謝活性、ATP、発光Ki-67などのプレートベースアッセイが実用的です。フローサイトメーターを利用でき、マルチパラメーターのデータが必要な場合は、CFSEと表面マーカーの組み合わせや、細胞内Ki-67染色によって詳細な免疫表現型解析が可能です。

複数のアッセイを組み合わせて全体像を捉える

実際には、多くの研究者が2種類以上のアッセイを組み合わせて使用しています。一般的な方法として、CellTiter-Glo®などの迅速な細胞生存率アッセイでスクリーニングした後、Ki-67イムノアッセイやBrdU取り込みなど、細胞増殖を直接測定する方法でヒット化合物を詳しく評価します。これにより、その作用が細胞増殖抑制、細胞毒性、またはその両方によるものかを判断できます。Ki-67アッセイと細胞膜完全性検出色素をマルチプレックス測定する方法も、1回の実験で増殖阻害の作用機序を区別するうえで有効です。

まとめ

本ガイドで紹介した各測定法は、特異性とワークフローの複雑さのバランスが異なります。細胞を用いた研究が、より複雑なモデルやハイスループットワークフローへと進むにつれて、細胞増殖アッセイに求められる性能も高まっていきます。特異性、拡張性、簡便性を備えた測定法を選択することが、今後の実験を支える確かな基盤となります。