ルミネッセンスリソースセンター
ホタルの光る尾や、海に現れる明るい青い波は、自然界におけるルミネッセンス(発光)の代表的な例です。この現象は、生化学や分子生物学が発展し始めた初期の段階で、生物学的アッセイの強力なプラットフォームとして研究者たちに認識されました。1991年、私たちは最初のルシフェラーゼアッセイ製品を発売し、それ以降、生物発光システムを革新的に活用することで、数多くのアッセイを開発してきました。
発光の仕組み、蛍光との違い、自身の研究にどのように応用できるかについて詳細をご確認ください。
ルシフェラーゼレポーターアッセイに興味はあるけれど、どれを選べばよいかわからない方、下記のガイドがあなたのニーズに最適なアッセイを見つける手助けになります。
生物発光とは
バイオルミネッセンス(生物発光)は、天然の触媒化学反応によって発光する、生物で見られる発光の一種です。これらの光を発する反応はホタル、クラゲ、バクテリアなど多様な生物にみられます。
他のタイプの発光としては、放射能に由来するラジオルミネッセンス(シンチラント等)や電気由来するエレクトロルミネッセンスなどがあります。
生物発光の仕組み
生物発光反応では、光は化学エネルギーから生成されます。 代表的な例としてはルシフェラーゼ酵素による触媒反応で、これはホタルを光らせる反応と同様の反応です。 この反応はルシフェリン、酸素(O2)、アデノシン三リン酸が試薬として関与します。 ルシフェラーゼとMg2+はこの反応の触媒です。 ルシフェラーゼはルシフェリンをオキシルシフェリンへ参加する反応を触媒します。 この反応の過程で、ルシフェリンは高化学エネルギー状態へ励起します。 その後、化合物は振動緩和を経て、低エネルギー状態に移行します。 基底状態に至る最後にオキシルシフェリンは発光と呼ばれるプロセスで光としてエネルギーを放出します。
このルシフェラーゼ-ルシフェリン反応は、ネイティブな生物発光の典型的な例です。しかしながら、ネイティブなルシフェラーゼ遺伝子は遺伝子レポーターアッセイやその他の生物学的アッセイに最適ではありません。1990年代にプロメガの科学者は遺伝子工学を駆使してネイティブなホタルルシフェラーゼを着実に最適化していきました。最終的なデザインはルシフェラーゼが哺乳類細胞で均一かつ最適な状態で発現し、オフターゲット効果を最小限に抑え、転写ダイナミクスに素早く反応するシステムを実現しました。
他の基質と酵素の組み合わせにおいても同様に、生物発光を発生させることが可能です。発される光の色と強度と持続時間は、熱力学と特定の反応のカイネティクスに依存して変わります。例えば、プロメガの科学者は指向性進化法を利用して深海エビの生物発光システムを弊社のNanoLuc®ルシフェラーゼシステムに改変し、ネイティブなホタルルシフェラーゼと比べてNanoLuc®とフリマジン基質の反応は、100倍の明るさを実現しました。
発光反応によって生成される発光シグナルは、反応中に任意の他の試薬を組み合わせることができます。例えば、遺伝子レポーターアッセイにおいては、目的の遺伝子に由来する調節配列の制御下にルシフェラーゼ遺伝子を配置します。細胞へルシフェリンとATPが含まれる試薬を添加すると、発光量は発現したルシフェラーゼの量に比例します。つまり、遺伝子発現量が多いほど、ルシフェラーゼ発現量も多くなり、発光シグナルが強くなります。逆に発現量が少なければ、発光も弱まります。その他のアッセイでは、ATPの濃度や濃度変化、あるいはルシフェリンやその他の発光基質の酵素による放出を測定することができます。
生物発光と蛍光の違い
生物発光と蛍光はどちらも自然界に見られる現象であり、どちらもよく生物学的システムの解析ツールとして研究室で利用されます。生物発光と蛍光間の主な違いは、励起エネルギー源です。生物発光は化学エネルギーによって発生する一方で、蛍光は光子によって励起され発生します。
蛍光は発光に比べて非常に明るくすることができます。これは、励起状態への遷移を引き起こす光子を高レートで蛍光システムへ導入できるためです。しかしながら、生物学的アッセイにおいて、この光子の流入は、以下の2つの要因により高いバックグラウンドを引き起こします。一つは、光検出器が励起光と蛍光を区別する必要があること、もう一つはサンプル中の他の蛍光基による干渉です。
細胞顕微鏡法やフローサイトメトリーのような技術では、機器の光学系が光を制限するため、高いバックグラウンドは問題にはなりません。このような場合には、システムの明るさが最も重要な要因であるため、蛍光がよく使用されます。
一方で、光検出器がよりシンプルでより多くのサンプルを解析する必要がある場合では、低バックグラウンドであることが求められます。このような場合には生物学的アッセイにとって、発光はより使いやすいツールとなります。
発光アッセイの利点
感度
生物発光アッセイの最大の利点の一つは、その非常に高い感度です。殆どの真核細胞は自ら光を発しないため、生物発光反応により生じる光シグナルの強度はバックグラウンドシグナルに比べて非常に大きくなります。したがって、生物発光アッセイは非常に高いシグナル/バックグラウンド比をを持ち、10⁻²⁰モルという非常に微量のレベルまで定常的に測定可能です。これは一般的な生物学的サンプルにおいて、1細胞あたり数分子を検出できることに相当します。この高い感度により、生理的な内在性発現レベルに対応できるため、生物発光ツールは細胞本来の生物学的状態を正確に反映できます。
ダイナミックレンジ
生物発光アッセイはシグナルが非常に明るいため、広いダイナミックレンジでの測定が可能です。多くの生物発光アッセイは、基質濃度に対して6〜8桁の範囲で直線的な応答を示します。幸いにも、生物発光の定量に使用されるルミノメーターは、この非常に広い範囲での測定に対応しています。
ハイスループットアッセイ
広い直線性のあるダイナミックレンジと高感度により、生物発光アッセイは小型化され、中〜高スループットのプレートフォーマット(たとえば1536ウェルプレート)でも実行可能です。プロメガの科学者は、ネイティブの生物発光反応を最適化し、「添加・混合・測定」というシンプルなプロトコルを実現することで、ハイスループットアッセイを容易にしています。
柔軟なアッセイ設計
ホタル由来のネイティブな生物発光反応は、約2分の半減期をもつ短時間のフラッシュ型発光を示します。プロメガの科学者は、より長時間持続する発光を可能にするシステムを開発しました。たとえば、フラッシュタイプアッセイではシグナルの半減期は約10分程度ですが、発光は比較的明るくなります。一方、グロータイプアッセイでは発光強度はやや低いものの、シグナルの半減期は数時間持続することが多いです。これらの試薬は培養中の細胞に直接添加することができ、試料の前処理が不要な「添加・混合・測定」形式に対応しており、低〜高スループットワークフローに適しています。
さまざまな生物学的プロセスとの連動が可能
生物発光アッセイのもう一つの利点は、発光の強度が反応成分の濃度に依存する点です。この特性により、生物学的プロセスをこれらの成分に結びつけることで、細胞死、遺伝子発現、タンパク質間相互作用、キナーゼ活性など、さまざまな分子プロセスと発光シグナルを関連付けることができます。
生物発光アッセイで、研究の疑問を解決してみませんか?
当社のサイエンティストにぜひご相談ください。私たちは、生物発光および生物発光アッセイに関して30年以上の実績を持っています。最適なアプローチを一緒に見つけましょう。
発光アッセイで、研究の可能性を広げてみませんか?
プロメガでは、お客様の具体的な研究課題に応えるために、さまざまなルミネッセンスアッセイを開発してきました。以下のリソースをご覧いただき、ニーズに合ったアッセイを見つけてください。
生物発光の力を実感してみませんか?下記動画では、科学者たちが生物発光アッセイを用いて研究をどのように進化させたかをご覧いただけます。
ハイスループットスクリーニングのための生理学的に関連性の高い3D肝臓モデルの開発
スウォンジー大学の Samantha Llewellyn 博士は、CellTiter-Glo® 3D assayを用いて3D肝細胞モデルを研究しています。3D細胞培養モデルに最適化された生物発光アッセイについて詳しくは、3D細胞培養入門ガイドをご覧ください。
生細胞からライセートへ:NanoBiT の生化学アッセイフォーマットへの適用
フランシス・クリック研究所のMohammad Ismail博士は、NanoBiT® Protein:Protein Interaction assayを新たな方法で活用し、がん創薬のターゲットに対する低分子阻害剤の検出に取り組んでいます。NanoBiT® テクノロジーがどのように生化学アッセイへと応用されたかについて、ぜひご覧ください。
アッセイに“生命”を吹き込もう
ライブセルイメージングは、従来の発光アッセイに空間的および時間的な情報を加えることができます。リアルタイムで発光アッセイを視覚化することで、細胞内の動的なプロセスをより深く理解することが可能になります。
GloMax® Galaxy細胞発光イメージャーを使えば、タンパク質間相互作用、ターゲットエンゲージメントなどを可視化・モニタリングできます。 ※本製品は研究用です。診断目的にはご使用いただけません。
発光はどうやって測定するのか?
ルミノメーターは、発光(ルミネッセンス)を測定するために最も一般的に使用される装置です。吸光や蛍光の測定に使われる装置と比べて、ルミノメーターは構造がシンプルで、光源やフィルターを必要とせず、光検出器のみで測定が可能です。また、ルミノメーターでは通常、アッセイごとに特定の検出波長を選択する必要がなく、可視光全体の範囲の光を検出します。これにより、発光アッセイでは高いシグナル対バックグラウンド比(S/B比)を得やすくなるという利点があります。
ルミノメーターには、プレートリーダー形式と単一チューブ測定形式の2種類があります。中には、GloMax® Discover や GloMax® Explorerのように、発光、蛍光、吸光度のすべてを測定できる装置もあります。プレートリーダー型ルミノメーターでは、各マイクロプレートウェルからの発光シグナルを個別に測定するための光検出機構が備わっており、隣接ウェルからの光の漏れ込み(クロストーク)を防ぐ制御機能も搭載されています。
発光アッセイを実施する際には、あと2つの道具が必要になります。
アッセイの解析にマイクロプレートリーダーを使用する場合、まず必要なのは不透明な白色マイクロプレートです。これらのプレートは光を反射するため、アッセイシグナルを最大限に高める効果があります。ウェルの底部は、不透明なものと透明なものの両方があります。
「グロータイプ」ではなく、「フラッシュタイプ」の発光シグナルを生成するアッセイを使用する場合は、もう1つ道具が必要です。それはインジェクターです。インジェクターは、発光反応の開始に必要な基質を添加し、ルミノメーターによるシグナル測定のタイミングを同期させる役割を果たします。